ここから先は外部サイトへ移動します

これからアクセスしようとしているウェブサイトの内容は、グラクソ・スミスクライン株式会社によって管理されているものではありません。その正確性、安全性、信頼性はグラクソ・スミスクライン株式会社が保証しているものではないことをご了承ください。

続ける

戻る

病棟レベルの在宅医療に薬剤師欠かせない
東大医科研病院・岩瀬医師

東京大学医科学研究所附属病院(港区)緩和医療科の岩瀬哲医師は、がん患者が在宅療養に円滑に移行できるようにする「在宅移行ケア」(Transitional Care)に取り組んでいる。その中で、薬剤師も、在宅医療に対して積極的に参加することを望んでいる。

「病院と同じレベルの良質な医療を提供するには、病棟と同じように在宅にも、薬剤師の存在は不可欠です。私が所属する緩和ケアチームでも、疼痛管理をするための医療用麻薬を投与する場面では、薬剤師と相談しながらやっています」―。岩瀬医師は、こう話す。

▲インタビューに応じる岩瀬医師(右下は、タブレットを使った遠隔診療の様子を再現

そして、岩瀬医師が試行的に始めているのが産学共同研究で、「在宅移行ケア」に遠隔診療を導入しようというものだ。この研究は、入院時に主治医だった病院の医師が、遠隔診療をツールにして、在宅医や看護師などと連携するものだ。タブレット端末を使って、患者の状態を把握し、診療計画を練り直したりする。

岩瀬医師には、患者の緊急入院は「医師の敗北」で、医師が患者の状態の変化を予測して、緊急入院ではなく予定入院に変えることができれば、患者のQOL(生活の質)向上につながるとの信念がある。この研究の最終目的は、在宅のがん患者の急性増悪による緊急入院を少なくすることだ。

この遠隔診療により、患者は病院での主治医が継続して診ていることで、療養に専念することができる。在宅医は病院の医師に、疼痛管理の方法についてのアドバイスを求めたり、QOLを高めるための痛みや倦怠感の取り方などについて相談したりすることができる。在宅医にとっては何より、24時間365日、バックベッドがある安心感につながっている。

遠隔診療を実際に運用する場面では、在宅医が患者のベッドサイドで診療をしながら、身体所見、血圧などのバイタルのほか、患者の痛みの訴えなどの状況を専門的な観点で分析し、テレビ会議で病院の医師に伝えることで、遠隔診療の欠点を補っている。遠隔診療では、身体所見を把握するための、触診、打診、聴診などが困難だと指摘されている。

岩瀬医師は、「遠隔診療は、どうしても対面診療と比べたデメリットが強調されがちだが、画面を通じて、患者が病棟では見せない家族の中での様子を把握することができ、ADL(Activities of Daily Living、日常生活動作)を録画して、以前に比べて改善したかどうかや悪化したかどうかなどを評価しやすくなる」などと話す。遠隔診療の特性をメリットに変える必要があるというのだ。また、看護師のほか、薬剤師などとの協働により、遠隔診療の可能性は広がると期待しており、とりわけ、在宅医療に対して後発組となる薬剤師の役割は小さくないと考えている。

岩瀬医師は、こう話す。
「病棟には薬剤師が常勤でいて、服薬指導などをしたり、緩和ケアチームでは、薬剤師が協力してくれたりしますが、在宅には薬剤師がいません。薬剤師が在宅にいるとしても、服薬指導で来ているときくらいです。保険医療の枠内、つまり診療報酬上で、薬剤師がチームとして参加しやすいようにインセンティブが付けば状況が変わってきます。そのためには、患者のQOLが向上するというエビデンスの集積をしなくてはいけません。それは私たちの役割になると思います」

今、岩瀬医師が関心を持っているのが、米国のアカウンタブル・ケア・オーガニゼーション(ACO)だ。オバマ政権下の医療改革、いわゆるオバマケアの一環として、創設されたACOは、病院や施設などが一つの組織となり、患者の診療に責任を持ち、患者ごとにバンドルドペイメント(BPCI =Bundled Payments for Care Improvement)と称する包括払い方式で医療費を受け取る仕組みだ。

ACOには、心不全、急性心筋梗塞、肺炎の患者で、再入院率が一定の目標値を上回ると医療機関に罰則を科すという再入院削減プログラムが盛り込まれている。このプログラムが盛り込まれた背景には、米国メディケア支払い諮問委員会(Medicare Payment Advisory Commission)による、5人に1人の高齢者(65歳以上)が退院後30日以内に再入院している中で、7割以上は防ぐことができたのではないかという分析がある。

岩瀬医師は、「ACOはその名の通り、再入院してしまう責任を誰が負うのかを明確にする政策です。病院の医師だけでなく、在宅医、看護師、それに薬剤師などの医療者がチームとなって、患者のQOLを向上させる米国の取り組みは、日本の医療が見習うべきところだと思うのです」と言う。

▲緊急入院時の割合(28.6%)のデータを示す岩瀬医師

地域住民の予防医療で「健康サポート薬局」に期待

また岩瀬医師は、地域の薬局が住民の予防医療で大きな貢献ができると期待している。これこそが、厚生労働省が今、注力している「健康サポート薬局」だ。厚労省はこのほど、昨年12月末までで31都道府県の113軒[1]の薬局が、「健康サポート薬局」として届け出たことを明らかにした。

「健康サポート薬局」とは、地域に密着した薬局が、一般用医薬品などの適正使用に向けた助言や健康相談を行なうというものだが、岩瀬医師は、予防の患者は病院に来ないので、薬局はより一層、住民の健康を管理する役割を担うという意味で重要になると言う。

岩瀬医師は、予防医療もエビデンスに基づくべきだとして、東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利・運動科学研究室長らが実施した、いわゆる「中之条研究」が参考になると言う。中之条研究とは、群馬県中之条町に住む65歳以上の5000人を対象に、15年以上にわたり、身体活動と病気予防の関係について調査[2]したものだ。

この調査は、慢性疾患などの有病率とウオーキングといった運動との相関を調べたもので、有意な結果を導き出した。具体的には、「高血圧症」「糖尿病」を防止するための1日の活動目標が、ウオーキングで8000歩もしくは中強度の運動20分程度、「メタボリックシンドローム」を防止するための同じく1日の活動目標が、ウオーキングで10000歩もしくは中強度の運動30分程度などとなった。

青柳室長と一緒に地域住民の健康づくりのプロジェクトを企画している岩瀬医師は、こう話す。

「がんの終末期医療と健康な人の予防医療のステージは、分かれているように見えますが、実は、人が地域で生きていく中では、つながっています。地域住民の予防医療から病院での入院医療もしくは、その後の在宅復帰まで全体をカバーできるのは、医師や看護師はもちろん、薬剤師であることを認識してもらう必要があります。また、薬局の薬剤師には、中之条研究などのエビデンスに基づいて、健康指導する役割があると思います」

[1] 平成29年1月19日 全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)説明資料 p11  http://www.mhlw.go.jp/topics/2017/01/dl/tp0117-k01-03-01p.pdf(2017年4月25日閲覧)

[2] 「やってはいけないウォーキング」著者:青柳幸利氏 SB新書から

【当コーナーの著作権について】
当コーナーで提供する全ての文章、画像、プログラム及びその他一切のコンテンツの著作権は、株式会社CBnewsに帰属します。ご利用者は、株式会社CBnewsへの事前の書面による承諾なく、複製、複写、転載、転送その他ご利用者の私的利用の範囲を超えて使用してはならないものとします。ご利用者様個人で利用するのみの場合を除き、他のウェブサイトや印刷媒体、その他の記録媒体等において、複製、改変、転載などをすることはできません。その他著作権法で認められている範囲を超えて、当コーナーで提供されているコンテンツを株式会社CBnewsへの事前の書面による承諾なく使用することはできません。

【自己責任と医師への相談】
当コーナーで紹介されている内容については、ご利用者様がご自身の責任においてご判断ください。 当コーナーで提供する情報は、あくまで一般的な医学知識の情報であり、ご利用者様の個別具体的な症状等を踏まえた診断を行うものではありません。又、内容については、正確かつ最新の情報を保つよう最善を尽くしておりますが、情報の正確性、最新性、有用性、安全性及び満足度等について万全の保証をするものではありません。本コンテンツで提供する情報については、ご利用者様自身の責任においてご判断ください。ご利用者様の個別具体的な症状等については、当コーナーにおいて提供される情報のみに依拠して判断又は対処するのではなく、医師にご相談のうえ、専門的な診断を受けることをお勧めいたします。本コンテンツ上で提供される情報を信頼したことによりご利用者に何らかの不利益や損害が発生した場合でも、株式会社CBnews、グラクソ・スミスクライン株式会社は一切責任を負わないものとします。