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よくあるご質問(ボツリヌス療法)

 

調製・取扱い・失活・廃棄

  • Q1 ボトックスとは何?

    A1

    ボツリヌス菌Clostridum botulinumにより産生されるA型ボツリヌス毒素を有効成分とする薬剤です。2023年7月現在、国内では以下の適応症に対する効能又は効果が認められています。
    ○眼瞼痙攣、○片側顔面痙攣、○痙性斜頸、○上肢痙縮、○下肢痙縮、○2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、○重度の原発性腋窩多汗症、○斜視、○痙攣性発声障害、○既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁、○既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁

    ボトックスの作用機序は以下の2通りです。
    ①筋弛緩作用:末梢の神経筋接合部における神経筋伝達を阻害することにより発現
    ②発汗抑制作用:交感神経と汗腺の接合部における神経伝達を阻害することに発現


    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q2 ボトックス 1バイアル中に含まれる成分および添加物は?

    A2

    「ボトックス注用100単位」1バイアル中には、A型ボツリヌス毒素100単位、人血清アルブミン0.5mg、塩化ナトリウム0.9mg、
    「ボトックス注用50単位」1バイアル中には、A型ボツリヌス毒素50単位、人血清アルブミン0.25mg、塩化ナトリウム0.45mgが含有されています。
    なお、1単位とは、マウスへの腹腔内投与による50%致死量(LD50値)を定めています。


    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q3 ボトックスの基本情報(薬価基準収載年月日、発売年月日、承認年月日、国際誕生年月日、薬効分類、規制区分、和名、一般和名、洋名、一般洋名、名称の由来)は?

    A3

    弊社製品基本情報サイトにてご確認いただけます。
    ボトックス製品基本情報はこちら

  • Q4 ボトックスの溶解・調製方法は?

    A4

    ボトックスは保存剤を含まない日局生理食塩液(生食)で溶解します。一般的に、多量の生食で溶解した薄い薬液は広い範囲、少量の生食で溶解した濃い薬液は狭い範囲に効果を及ぼすとされます[1][2]
    対象筋の大きさに応じて濃度を調整することが一般的です。以下の数値はあくまでも目安とお考えください。

    〇眼瞼痙攣、片側顔面痙攣:50単位製剤を0.5~1mL程度の生食で溶解するのが一般的。眼科では50単位/2mLとされることも多い[3][4]
    〇痙性斜頸:通常は100単位製剤を1~2mL程度の生食で溶解するが、治療対象筋が大きい場合は、より多くの生食を用いることもある[5]
    〇痙縮:100単位製剤を4mL程度の生食で溶解するのが一般的(治験では上肢痙縮が100単位/2mL、下肢痙縮が100単位/8mL)[5]
    〇腋窩多汗症:100単位製剤を4mLの生食で溶解することが推奨される(治験も同様)。
    〇斜視:1筋あたりの薬液量を0.05~0.15mLとすることが推奨[6]されており、1筋あたりの投与量が1.25単位なら50単位/4mL、2.5単位なら50単位/2mL、といった使い分けが必要。
    〇痙攣性発声障害:片側あたり(=1筋あたり)の薬液量を0.1mLとすることが推奨される[6]。片側あたりの投与量が2.5単位であれば、50単位製剤を2mLの生理食塩液で溶解するのが一般的。
    〇過活動膀胱:100単位を10mLの生食で溶解し、20ヵ所に分割して注射することが推奨されている[6]
    〇神経因性膀胱:200単位を30mLの生食で溶解し、30ヵ所に分割して注射することが推奨されている[6]。神経因性膀胱への投与に際し、本剤200単位を30mLの薬液として調製する場合は、①100単位バイアル2本をそれぞれ6mLの日局生理食塩液で溶解し、②合計12mLの薬液を3本の10mLシリンジに4mLずつ吸引した後、③各シリンジに追加で6mLの日局生理食塩液を吸引する。3本のシリンジはそれぞれ薬液10mL(約67単位)を含有する[6]

      溶解液の量(日局生理食塩液) 溶解後のボツリヌス毒素濃度
    50単位 1.0mL 5.0単位/0.1mL
    2.0mL 2.5単位/0.1mL
    4.0mL 1.25単位/0.1mL
    5.0mL 1.0単位/0.1mL
    100単位 1.0mL 10.0単位/0.1mL
    2.0mL 5.0単位/0.1mL
    4.0mL 2.5単位/0.1mL
    8.0mL 1.25単位/0.1mL
    10.0mL 1.0単位/0.1mL

    [1] 目崎高広:ボツリヌス治療Q&A集 Page:3-4 (2003)
    [2] 目崎高広:ジストニアとボツリヌス治療(改訂第2版) Page:70-72 (2005)
    [3] 梶龍兒 総監修:神経疾患のボツリヌス治療 , 16 - 27 , 2010
    [4] 梶龍兒 総監修:眼科疾患のボツリヌス治療 , 2-14, 2009
    [5] 梶龍兒 総監修:ボツリヌス治療実践マニュアル , 6-9 , 2012
    [6] ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q5 ボトックスの有効期限または使用期限、貯法・保存方法は?

    A5

    有効期間は3年です。

    5°C以下の冷所に保存してください。保存剤を含んでいないので、調製後は速やかに使用してください。また、調製後は冷凍しないでください。

    ボトックス製品基本情報はこちら

  • Q6 ボトックスは、医師なら誰でも使用(投与)可能か?

    A6

    ボトックス講習・実技セミナー受講医師のみが使用可能です。

    承認条件の中に「本剤についての講習を受け、本剤の安全性及び有効性を十分に理解し、本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師によってのみ用いられるよう、必要な措置を講じること。」とあることから、使用医師の限定を設定しております。


    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q7 ボトックスによる汚染が生じた場合の処理方法は?

    A7

    1)本剤が飛散した場合はすべて拭き取ります。溶解前の場合、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液をしみ込ませた吸収性素材で拭き、乾かします。溶解後の場合は、吸収性素材で拭き取った後に、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で拭き、乾かします。
    2)本剤が皮膚に付着した場合は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で洗い、水で洗い流します。
    3)本剤が眼に入った場合は、水で洗い流します。


    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q8 ボトックスの失活・廃棄は必ず実施しなければならないのか?

    A8

    ボトックスは、下記承認条件が付されている関係上、所要の失活・廃棄処置を行う必要があります。
    ボトックス承認条件(抜粋)
    本剤の使用後に失活・廃棄が安全・確実に行われるよう、廃棄については薬剤部に依頼する等、所要の措置を講じ、廃棄に関する記録を保管すること。


    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q9 ボトックスの失活・廃棄の方法は?

    A9

    0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液で失活させます。

    ボツリヌス毒素が接触した器材はすべて、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に5分間以上浸してください。

    ボトックスの廃棄の方法

    残った薬液は、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させます。失活後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄してください。

    薬液の触れた器具等も同様に0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて失活させた後、密閉可能な廃棄袋又は箱に廃棄してください。


    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

 

治療一般

  • Q1 ボトックスの副作用にはどのようなものがありますか?

    A1

    重大な副作用として、次の症状があらわれることがあるため、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うようにお願いいたします。
    ショック、アナフィラキシー、血清病(0.01%)
    眼障害(0.34%)
    嚥下障害(0.75%)、呼吸障害(0.03%)
    痙攣発作(0.01%未満)
    尿閉(0.05%)
    尿路感染(0.06%)

    その他副作用等、詳細は電子添文の副作用の項および各臨床成績の項の安全性の結果をご参照ください。


    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q2 施注時の患者さんの姿勢は?

    A2

    眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、重度の原発性腋窩多汗症、斜視、痙攣性発声障害、過活動膀胱*1、神経因性膀胱*2では臥位、痙性斜頸、上肢痙縮では座位が基本とされています。下肢痙縮および小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足*3では、最も安定した姿勢で治療できるように配慮してください。

    *1 既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
    *2 既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁
    *3 2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足

  • Q3 施注時の痛みはどの程度か?軽減策はあるか?

    A3

    痛みに対する感受性は個人差が大きく、一概に述べることはできません。
    一般に細い針を使用したほうが痛みが軽減されます。[1]
    眼瞼痙攣や片側顔面痙攣、腋窩多汗症に対しては30ゲージ程度の針を使用することが推奨されています。
    過活動膀胱および神経因性膀胱の治療では、必要に応じて27ゲージ針の使用も可能です。
    痙性斜頸や上肢痙縮・下肢痙縮・小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足では23~30ゲージが用いられますが、体動が大きい場合には針が破損する危険があるため、細い針で施注する場合には十分な注意が必要です。

    また、注射前にアイスパックで注射部位を冷やすことや、局所麻酔テープ(リドカインテープ)、局所麻酔クリームなどが用いられる場合もあります [2]
    斜視では点眼麻酔薬の投与が推奨されています [3]。また、患者の年齢や状態に応じ、浸潤麻酔薬及び全身麻酔薬の使用も検討します [4]。過活動膀胱*1および神経因性膀胱*2では疼痛を軽減するために、必要に応じて局所麻酔薬の注入による膀胱粘膜麻酔や鎮静薬の投与を行うこと、と電子添文に記載されています [3]

    *1 既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁、
    *2 既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁

    [1] Skiveren J et al. Acta Derm Venereol. 2011; 91: 72-74
    [2]
     目崎高広、梶龍兒.ジストニアとボツリヌス治療(改訂第2版), p.66 - 75, 診断と治療社 2005
    [3] ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)
    [4] ボトックスインタビューフォーム

  • Q4 ボトックス投与後の注意、注射部位に対する注意はあるか?施注後すぐに帰宅させても良いか?

    A4

    注射後は、毒素の無用な浸潤を避けるため、数時間は注射部位をもまないように指導してください。
    注射直後には、アナフィラキシーの発現がないか等、体調不良が生じていないことを確認の上、問題がなければ帰宅していただけます。
    治療当日はできれば局所のマッサージ(化粧、洗顔)や、血流を過剰にする行為(入浴、過度の運動)を控えることが望ましいと考えられます。


    参考文献
    目崎高広. ジストニアとボツリヌス治療(改訂第2版). 2005:76

  • Q5 治療後の日常生活上の制限は?

    A5

    眼瞼痙攣・片側顔面痙攣では顔面部に注射しますので、注射当日の洗顔・化粧は不可となります。痙性斜頸・上肢痙縮・下肢痙縮・小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足・重度の原発性腋窩多汗症・斜視・痙攣性発声障害では、注射当日は、注射部位をもむことや入浴、激しい運動などを控えさせてください。また、ボツリヌス毒素はアルカリで失活しますので、針穴が完全に閉じるまで(数分)、注射部位を石鹸で洗わないように指導してください。

    注射の翌日以降は、特に日常生活上の制限はありませんが、副作用が発現する可能性がありますので、異常が認められた場合にはすぐに相談いただくように指導してください。副作用に関する詳細は電子添文の副作用の項および各臨床成績の項の安全性の結果をご参照ください。

    参考文献
    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)
    目崎高広. ジストニアとボツリヌス治療(改訂第2版). 2005:76

  • Q6 使用する注射針の太さおよび長さは?

    A6

    眼瞼痙攣、片側顔面痙攣の治療では26~30ゲージ、痙性斜頸や上肢痙縮・下肢痙縮・小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足では23~30ゲージが基本とされます[1][2][3]
    腋窩多汗症の治療では30~32ゲージが用いられています[4]
    斜視の国内臨床試験では27ゲージ、37mmの注射針が使用されました。
    痙攣性発声障害の治療では26ゲージ程度の針が使用されています。

    また、針の長さはおおむね太さに応じて決まりますが、眼瞼痙攣・片側顔面痙攣・腋窩多汗症では数mm程度で十分であるのに対し、痙性斜頸や痙縮、斜視、痙攣性発声障害では対象筋に到達させるため、ある程度の長さが必要となります。
    過活動膀胱及び神経因性膀胱においては膀胱鏡用注射針を使用します。


    [1] 目崎高広. ジストニアとボツリヌス治療(改訂第2版). 2005:66-75
    [2] 目崎高広. 神経内科. 2006;65(2):189-192
    [3] 木村彰男. 痙縮のボツリヌス治療. 2010:80-82
    [4] 玉田康彦. 多汗症のボツリヌス治療.2015:36-39

  • Q7 避妊はどれくらい必要?

    A7

    「妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳婦」への投与は禁忌です。妊婦、授乳婦に対する安全性は確立していません。電子添文には以下のように記載されています。
    「妊娠する可能性のある女性は、投与中及び最終投与後2回の月経を経るまでは避妊する。」
    「男性は、投与中及び最終投与後少なくとも3ヵ月は避妊する。」

    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q8 以前にボツリヌス中毒により抗毒素を投与された経験のある患者さんへの投与は可能?

    A8

    日本の抗毒素には、A,B,E,F型抗毒素の混合製剤とE型抗毒素のみの製剤があります。ボトックスはA型ボツリヌス毒素製剤であるため、前者の使用例では、抗体が体内に残存しているうちは、効果がないと考えられます。

  • Q9 眼球穿刺を起こしたときの対処方法は?

    A9

    すぐに針を抜き、眼球外傷として、眼科に受診していただいてください。

 

上肢痙縮・下肢痙縮

  • Q1 脳卒中後の痙縮に対するボツリヌス療法は、脳卒中発症後どれくらいの時期に始めるのが最も効果的か?

    A1

    欧州およびUKにおける痙縮に対するボツリヌス療法のガイドラインでは、治療を始める時期が明記されていません。文献では、脳卒中発症から6週間以上[1]、3ヵ月以上[2],[3]、6ヵ月以上[4]など、さまざまな開始時期の報告があり、いずれにおいても痙縮の軽減効果が認められています。国内臨床試験では、脳卒中発症後6ヵ月以上経過した患者において、上肢[5]及び下肢[6]痙縮の軽減効果が認められました。

    [1] Childers MK, et al. Arch Phys Med Rehabil 2004; 85:1063-1069.
    [2] Rosales RL, et al. J Neural Transm 2008; 115:617-623.
    [3] Bakheit AM, et al. Eur J Neurol 2001; 8:559-565.
    [4] Brashear A, et al. N Engl J Med 2002; 347:395-400.
    [5] Kaji R, et al. Curr Med Res Opin 2010; 26:1983-1992.
    [6] Kaji R, et al. J Neurol 2010; 257:1330-1337.

  • Q2 国内臨床試験では、痙縮発症から何年以内の患者がボツリヌス療法の対象とされたか?

    A2

    国内臨床試験では、ボツリヌス療法の対象症例の選択基準として、痙縮発症後の年数が規定されていません。脳卒中発症後の平均罹病期間は6年前後です。ただし、痙縮が進行して非可逆的拘縮に至った患者は投与対象から除外されました。

    [1] Kaji R, et al. Curr Med Res Opin 2010; 26:1983-1992.
    [2] Kaji R, et al. J Neurol 2010; 257:1330-1337.

  • Q3 上肢と下肢の両方で痙縮がみられる場合、ボトックスで同時に治療することは可能ですか?また、投与量の目安は?

    A3

    ボトックスの電子添文には以下の通り記載されています。

    複数の適応に本剤を同時投与した場合の安全性は確立されていないため、複数の適応に本剤を同時に投与しないことが望ましい。やむを得ず同時に投与する場合には、それぞれの効能又は効果で規定されている投与量の上限及び投与間隔を厳守するとともに、12週間のA型ボツリヌス毒素の累積投与量として400単位を上限とすること。ただし、上肢痙縮及び下肢痙縮に対する同時投与では合計600単位を上限とし、患者の状態に応じて徐々に増量する等、慎重に投与すること。海外臨床試験において、成人を対象に上肢痙縮及び下肢痙縮に合計600単位を同時に投与した経験はあるが、国内臨床試験では、複数の適応に本剤を同時投与した経験はない。

    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q4 痙縮による複数の姿勢異常があるとき、投与部位の決定方法は?

    A4

    痙縮患者において、複数の異常姿勢がみられる場合は少なくありません。このとき、一度の治療ですべての対象筋における筋緊張亢進を取り去ることはできません。患者さんと話し合い、一番困っている症状から改善するように慎重に投与部位を決定し、治療を進めるようにしてください。

  • Q5 理学療法や作業療法を行わない上肢・下肢痙縮患者にはボツリヌス療法を施行できないか?

    A5

    ボトックスの電子添文には以下の通り記載されており、理学療法や作業療法と併用して使用することが推奨されます。

    5. 効能又は効果に関連する注意
    〈上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足〉
    5.1 本剤は理学療法、作業療法等の標準的治療の代替とはならないため、これらの治療と併用して使用すること。

    ボトックス電子添文2022年11月改訂(第2版)

  • Q6 前回のボツリヌス療法の効果が不十分の場合、その原因はなんですか?

    A6

    前回の治療効果が不十分の場合、下記の原因が考えられます。

    1. 標的筋の選択が誤っている(痙縮の原因筋ではない)
    2. 投与量が足りない
    3. 標的筋の同定が不正確(実際に標的筋にしっかり入っていない)
    4. 病態が進展している(筋の線維化または関節の拘縮など)
    5. まれだが抗体産生の可能性

    Wissel J, et al. J Rehabil Med 2009; 41:13-25.

 

眼瞼痙攣・片側顔面痙攣

  • Q1 眼瞼痙攣・片側顔面痙攣と鑑別すべき 疾患は?

    A1

    眼部ミオキミア、チック、開瞼失行、眼瞼下垂などがあります。

  • Q2 下眼瞼の鼻側に施注してもよい?

    A2

    内眼角より鼻側に注射針が入ると、鼻涙管に薬液が浸潤してしまい、流涙を生じることがあります。下眼瞼の最内側部は注射部位として不適切ですので避けていただくようにお願いいたします。

  • Q3 片側顔面痙攣でボツリヌス療法を優先する対象となる患者さんは?

    A3

    片側顔面痙攣の根治療法として神経血管減圧術(Jannetta手術)がありますが、顔面痙攣は生命に関わる病態ではないため、患者さんは手術を忌避する傾向が強いようです。以下のような理由で手術の施行が難しい患者さんはボツリヌス療法の対象となります。

    • 手術は全身麻酔で行われるため、全身麻酔にハイリスクである患者さん
    • 手術による聴力障害の発生リスクは低いものの、発生すればQOLを著しく低下させることから、既に健側に聴力障害のある患者さん
    • 過去に手術を施行されても症状が改善しなかった患者さん
    • 手術で痙攣が消失したものの、数年を経て再発した患者さん
    • 他の理由で手術を受け入れられない患者さん

    [1] 日本神経治療学会治療指針作成委員会編. 標準的神経治療:片側顔面痙攣. 神経治療 2008;25:481-493.

 

痙性斜頸

  • Q1 症状が複雑なときの、投与部位の決定方法は?

    A1

    痙性斜頸の症状は、回旋、前後屈、側屈、肩挙上、側彎などの要素に分解できます。

    しかし、これらの1つだけを呈する例は少なく、通常は、いくつか複合しています。
    複雑な症状を持つ症例では、異常姿勢を上記の要素に分解し、どれが中心となっているかを見定め、主たる要素になっていて、触診上最も強い緊張を認める筋が、最初の治療対象になります。
    痙性斜頸の場合、一度の治療ですべての筋緊張の亢進を取り去ることはできません。患者さんと話し合い、一番困っている症状を改善する治療を第一選択としてください。

  • Q2 投与量は毎回異なる?

    A2

    毎回異なると考えてください。
    前回の施注後の変化を踏まえ、毎回異常姿勢を観察し、都度投与筋を選定してください。また、投与筋の筋緊張が低下する一方で協働筋の緊張が亢進し、異常姿勢が再現される「もぐらたたき現象」が起こる可能性や同一筋の他の筋束に新たな緊張が生じることもあります。このため、初回投与以降も、緊張筋の同定を注意深く行い、治療対象となる筋・投与量を決定してください。

  • Q3 異常姿勢に関与している筋と、随意的に(頭位偏倚を矯正するために)緊張させている筋の見分け方は?

    A3

    痙性斜頸の原因筋は、個々の異常姿勢ごとにほぼ解明されていますので、原因筋として理屈に合っているかという観点から判断可能です。偏倚を矯正するために緊張させている筋にボトックスを投与すると、かえって増悪する可能性があります。

  • Q4 誤って標的筋以外に施注した場合の影響は?

    A4

    注射した筋が斜頸姿勢に拮抗する筋であった場合や偏倚を矯正するため(随意的)に緊張させている筋に投与すると、斜頸姿勢が悪化すると考えられます。

  • Q5 前屈の患者さんに対して、両側への胸鎖乳突筋に投与してよいですか?

    A5

    嚥下障害発現のリスクを抑えるため、両側の胸鎖乳突筋への同時投与は行わないでください。

    そのため、片側ずつ治療する必要があります。患者さんが前屈とともに回旋を合併している場合は、右回旋なら左側、左回旋なら右側の胸鎖乳突筋に投与してください。

  • Q6 心因性の痙性斜頸に対する効果は?

    A6

    はっきりと心因性とわかる場合には、ボツリヌス療法の対象にはなりにくいと考えられます。

 

2歳以上の小児脳性麻痺患者の下肢痙縮に伴う尖足

 

重度の原発性腋窩多汗症

 

本コンテンツは日本国内の医療従事者向けです。
製剤写真及びPDF資料は、患者指導の目的に限りダウンロード頂けます。
ボトックスは、米国法人のアラガンインコーポレーテッド(米国アラガン社)が有する登録商標です。